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2019年5月

強誘電体の発表について2 (2019年春応物)

前回の続きです。

 

【PZT系】

PZT系は5件と少なめです。この材料は私自身の専門でもあるのですが、すでに応用がどんどん進んでいるため応用物理学会の研究テーマとしては合わなくなってきているのかもしれません。しかしながら、PZT系はまだまだ奥深く、20年以上研究している私から見ても、新たな知見がどんどんわかってきている感じです。まだまだ伸びそうな材料ですが・・・・。

 

【BST系】

1件のみの発表です。この材料固有というよりも、基板材料との関係性での結晶性、歪などと評価結果が発表されています。

 

【LiNbO3】

1件のみの発表です。グラフェンを用いて焦電特性を評価しています。

 

【PVDF系】

大阪府大のメンバーが、電気熱量効果としてPVDFを利用しています。私自身、不勉強でしたが、「電気熱量効果(Electrocaloric effect; EC effect)とは、電気双極子を有する物質に電界を印加/除去した際に生じる可逆的な発熱/吸熱過程を指す。 」とのことです。結果としては10kHzの電圧印加で0.2度程度の温度変化が観測されているようです。まだまだ小さい変化ですが、非常に面白い現象ですので、ブレークスルーを期待したいです。

 

材料の点から強誘電体薄膜のセッションをまとめてみました。

感想としては、HfO2がホットなこと、非鉛系の圧電材料の研究が活発なこと、PZT系は一段落、新たな応用としてPVDFの電気熱量効果の利用が面白いなと思いました。強誘電体/圧電体分野は現象自体が面白いこと、応用がいろいろあること、薄膜形成に苦労がありそれなりに研究としては面白いことから、まだまだR&Dは続くような印象です。今回発表のなかったAlNやGaN系の圧電体も興味深いところです。

以上

 

 

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強誘電体の発表について1 (2019年春応物)

強誘電膜関連の発表を材料で分類してみました。

HfO2系 4件
(K,Na)NbO3系 2件
ReFeO3 (フェライト系)8件
PZT系 5件
(Ba,Sr)TiO3 1件
LiNbO3系 1件
PVDF関連 2件
他 3件 


それぞれ簡単にコメントします。

【HfO2系】
酸化ハフニウム(HfO2)は2011年に薄膜で強誘電性が発見されてから、材料研究としては新しく興味深いです。近年は酸化物の成膜技術が著しく進んでいるので、きれいな結晶を作成することは容易になっており、その物性の評価が進むと思われます。
私見ですが、酸化ハフニウムは半導体プロセス適性が高そうなので、組成の検討などが進みより高い性能の材料が得られれば非鉛の圧電MEMSに適用できると面白いと思っています。

【KNN系】
非鉛圧電体で実績があり圧電定数が高いのがKNN系の材料です。今回発表は2件ということで少ないです。初期のブームの研究が一段落したこと、アクチュエーター系の材料であればPZT系系の方が優れていること、Pb系は未だRoHs規制には引っかかっていないことから、圧電MEMSの実用化はPb系で進んでいるのでKNN系のメリットが今の所は見いだせないと思っています。
KNNの性能がかなりUPする、もしくはPb系の規制が入れば大きく状況は変わると思います。。


【ReFeO3 (フェライト系)】
この系もKNNと同様に非鉛圧電体としてかなり検討されています。KNNよりも発表件数が多くなっています。私見ですがこの材料はリークが多いような気がしています。組成の調整等でいいものができればいいと思いますが。現状では圧電体としてはPZT系の方が優れているのですが、まだまだ材料部分での検討ができそうなことから期待しています。


次回に続く

 

 

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薄膜技術の研究開発動向 2019年春の応用物理学会より

薄膜技術関連の研究開発の動向を2019年春の応用物理学会の予稿集からピックアップしました。

以下のセッションになります。

6 薄膜・表面

 6.1 強誘電体薄膜
 6.2 カーボン系薄膜
 6.3 酸化物エレクトロニクス
 6.4 薄膜新材料
 6.5 表面物理・真空
 6.6 プローブ顕微鏡

それぞれの発表件数をまとめると、以下のような件数になります。

項目 件数
強誘電体薄膜 25
カーボン系薄膜 45
酸化物エレクトロニクス 45
薄膜新材料 37
表面物理・真空 6
プローブ顕微鏡 43
合計 201

 

材料の点から簡単にコメントします。

強誘電体関連はメモリからアクチュエータ、センサまで様々な用途があり盛んに研究されています。また強誘電体関連の材料の酸化物エレクトロニクスの中にも何件かあります。強誘電体材料のセッションでは、いわゆるPb系(PZTなど)の強誘電体よりも非鉛系の研究の方が圧倒的に多くなっています。産業界ではPb系の応用が主流なのですが、学術的には新しい材料とその物性の調査/研究が主流となっています。この部分に関しては別途述べていきたいと思います。

カーボン系の材料は、高い強度を持つDLC(ダイヤモンドライクカーボン)や窒化炭素などの研究、半導体材料としてのダイヤモンドに関しての研究が盛んです。

酸化物エレクトロニクスでは、以前は透明導電膜系の発表が多かったと思うのですが、今は多種多様になっており透明導電膜のほか、酸化物半導体、太陽電池、メモリ材料、Liイオン電池関連などの発表がありました。

薄膜新材料に関しては、色素増感太陽電池関連、液中プラズマによる酸化物膜の形成、断熱材料、金属系のセンサ材料、光触媒等々です。特にこのセッションでは薄膜の新しい作成方法に関しても発表があります。産業界としては新規な製法により大幅なコストダウンや性能アップ、さらには、従来出来なかったものが作成できるようになると価値が高いと思っています。学会ですので、その原理のところがわかってくると面白く期待しています。

以上

 

 

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